2024年1月11日木曜日

<知のけもの>シリーズ

 作者:カブさん

参謀と盗賊シリーズ二人用シナリオ。
どの作品も最低1時間はかかるかと思います。
全作品戦闘は無いのでどのレベルでも突入可能。
参謀と書いてありますが本の虫&知りたいという感情で行動する知識欲の塊PCが似合います。
盗賊はそんなPCに振り回されがちだけど仕方ないなぁと仕事してくれるPC推奨。

長い&ややネタバレなので追記から。

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【千と一夜の呪いの涯の】

山間の村で休息を取っていた冒険者たちに、村はずれの屋敷の娘が助けを求めた。
聞けば、彼女ら四人の娘を拾い育てた屋敷の主人が、今朝方死体となって見つかったという。

「先代の主人も変死を遂げた過去がある」
「屋敷の呪いなのではないか」

彼女の言葉に誘われ、冒険者たちは老人の死の原因を調査する。
(概要欄から引用)

知のけもの第一作目。

屋敷を中心に探索、村にも足を延ばしあらゆる疑問を調査していく推理シナリオ。
マルチエンディングで表面上だけ見ればこうだろうなという推理をするとあっさりめに終わります。
まぁ「知のけもの」と言うシナリオだけあってこれで終わるわけない。
全作品において「知りたいから知る」を徹底しており歯止めの利かない探求心は一般人から見れば異常。
それも冒険者としての正義心や金欲しさではなく、「知りたいがため」。
知りたくても理性が抑えるはずなのにこのPCには無い。皆が恐れる異常さがよく分かります。

今回は知識欲の塊PCを操作して事件の謎を解く事に。
盗賊PCはちょくちょく調査をサポートしてくれる便利な子。
推理パートは余すことなく調べればなんとかなります。
困ったら攻略テキストを見れば詰まないので親切設計。


こういう謎解き系は何書いてもネタバレになってしまうのでふわっとした感想になってしまいますね。
ただシナリオ内の世界観が凄く好みです、このシリーズ。
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【顔泥棒と紛いのサーカス】

宿への帰路につく冒険者たちは、船便を待つ数日間、路銀の足しにと依頼を請けることに。

ひとつは巡行サーカスの花形から、三年前の小火騒ぎの真相解明を。
ひとつは港町の御曹司から、無聊の慰みとしての絵のモデルを。
それぞれに持ちかけられた依頼は、しかし、奇妙な因縁をもって絡み合う。

――「本物」とは、何か?

顔無しの道化の問いかけに挑む。

(概要欄から引用)

知のけもの二作目。
今回は知識欲の塊PCと盗賊PCを交互に動かして真相に迫ります。
サーカス劇団に蠢く影というのはやっぱり好きですね、視覚的にも華やかな世界でもあるので。

推理や調査は健在、というかシステム的には今作が好きかもしれません。
「疑問」→「証拠」→「答え」→「疑問解決」の流れが快感を引き起こし、
まさに知のけものが味わっている感覚そのものを直に体験できます。
他作品のシステムも好きなのですが画面演出、効果音がシンプルで一番好き。

2人を交互に操作し増える疑問を一つずつ解き明かして分岐点。
全エンド見てしまうのですが勿論「知りたい」欲には勝てないので手を引くなんて一度も考えないぜ!

犯行に使われた代物も実際見てみたかったなぁと思ったり。
やっぱりああいう題材は良いですよね、あれが出る系のシナリオをやりがち。

そして忘却は力ではありますが当然恐ろしさもあります。
自分も誰にも覚えられないというのは怖いだろうなぁと考えるし他人に自分の存在していた
事実を押し付けられれば満足、と勝手に逃げるのもやるだろうな~とか。
忘却は不可逆で特殊な力もなくただの人間であれば逃れられるものではありませんが、
やっぱり忘れちゃうよねと簡単に受け入れたくないものです。

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【帳の魔女と墜つる星】

北辰の街ヴァラックの魔術師学連支部にて学ぶ、劇団員の少女からの依頼――
それは一年前に自死したとされる女生徒にまつわる秘密の解明。

調査を進める冒険者たちの前に、かつての自殺者と同じ場所、同じ姿で命を落としたひとつの遺体が転がり落ちる。

それは冒険者への「挑戦」か、あるいは「呪い」の再演か。
古き塔の頭上に、星はふたたび巡りくる。

(概要欄から引用)

知のけもの三作目。
演劇をテーマに魔術師学連支部と周辺を調査して女生徒の自殺?と途中で起きる事件の真相を暴きます。
今回は知識欲の塊PCが「聞き込み」のみ、盗賊PCが「探索」のみを行うため、
片方が出来ない事は片方が現場に赴き行動する事で証拠を得られます。適材適所ってやつですね。

サーカスに続き演劇というテーマも好きなのでのめり込みました。
演劇ならではの感覚というか某PCの言葉にはすっげ~分かる~となったり…。
そも自分が舞台に立って観客に見せるという経験が実際にあったので
尚更身に染みるというか、自分も一度は考えた事あるなぁと。
それはPCが言うように一種の呪いのようでもあり、重荷や重圧にも。
一瞬のもので記憶にしか残らないものだからこそ美しく、あの時の虜にされるのでしょうが
「もう一度」と言われると…。

どの作品でもそうですがないものねだりの嫉妬が毎度毎度こちらをつついてきます。
どんな人にも苦悩やコンプレックスがあったりしますが見えなければ全能に見えて
良いなぁ~となる気持ちは痛いほどわかります。
「試行」を「試行」のままにせず「実行」に移し、悩んでいる現状を良い方へと変えたいものだと思うばかり。
あのNPCも再び光を浴びられればいいなぁ。

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望潮に種を蒔く

廃港を抱えた漁村の学者から、
古書解読の依頼を請けた冒険者たち。
しかし村に到着したその日、灯台守の水死体が打ち上げられる。

遺体を発見した冒険者に疑いの目が向けられる傍ら、検死を担った渡来の医者は村を出よとの脅迫を受けており――。

変化を忘れた海辺の村に、旅人たちが轍を刻む。
無記名の手紙が破り捨てられるまでの物語。

(概要欄から引用)

知のけもの四作目。
なんと今回は盗賊PCをメインに操作して村の秘密、死体の真相を探ります。
辺鄙な村、漁村、既に嫌な予感はしていましたが何というか、田舎の排他的村ってこうだよね!がひしひし。
これまでの3作、華やかな街並みが多かったのですが今回はシンプル、塩のようにあっさりとした画面構成。
何処か寂しさをも感じさせます。それがこの辺鄙で静かな村感を際立たせているような。

知識欲の塊PCは今回依頼人の部屋に籠りっぱなしで盗賊PCがワードを投げて一つずつ疑問を解いていきます。
それ聞く必要ある?と言われるのでどうでもいいワードも投げがち。

村人の事なかれ主義や都合のいい所だけ押さえる感じがリアル。
多分こういうのは昨今無いのでしょうが昔なら割と横行してたんじゃないかなぁ。
医者というのは田舎では重宝されますよね、ドラマでよく見る。
正直この村には住みたくないというか田舎は噂の周りが早いし余所者には偏見があるので住みたくない。
依頼人たちのここでの生活はどんなものだったんだろうかと想像してしまいます、あまり良いものではないでしょうが。

画面の色彩は少ないですが潮風を感じるような光景が好きです。
そして2週目から本番!という感じがめちゃくちゃ良い、ワードの演出もゾワッとするような。
結局何がどうとはハッキリはされないし良い未来も待ってないだろうとされますが明言されないのが
このシナリオらしく思います。貝が流れていくようにあの人の未来もあらゆる事象の流れの中、真相を見る由もない
冒険者にとっては観測する事もない泡沫の存在と同じなのかも。
EDタイトルを見ると暗がりの中の灯なのも頷けるしフッと消されるよな存在なのも分かる。
何かが起きても風の噂だったり出来事のずっと後に知るのかもなぁ、なんにせよ儚い。

全体的に静かで淡々とした感じの中に余所者である冒険者はこの空間の中で異彩のような存在に見えたのが
良かったです。


知のけものシリーズ四作品どれも面白かった~、五作目も出るのでしょうか。
なんにせよ楽しみ。